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ウサギの一皿とシャラン鴨のシェフのスペシャリテ

よくお店で「このお料理はシェフのスペシャリテです。」なんていうことを聞くことがあると思いますが、私の解釈では、「シェフのスペシャリテ」 とはシェフ達の料理人人生において、多くのお客様から、「また食べたい。」と幾度もご要望が多く作らさせて頂いた一皿であって、シェフ自身やお店側が決めるものではないと思っています。

「シェフのスペシャリテ」とは長い年月を掛けてお客様に育てて頂いた一皿であると思っております。

ですから今年、料理人人生35年のシェフですが、そんなに何十もスペシャリテがあるわけではありませんし、中にはシェフも想像していなかったお料理がお客様のリクエストによりスペシャリテに昇格した一皿もあります。

フォアグラとトリュフの一口ソースコロッケその中で「フォアグラとトリュフの一口ソースコロッケ」 は紛れもない「シェフ宮本のスペシャリテ」に君臨している一皿であり、今ではディナーコースは日替わりのメニューにも関わらずこの一皿は必ずコースに入っているようになっております。

てんとう虫のデザインのトマトのサラダまた、「てんとう虫のデザインのトマトのサラダ」の人気はシェフにとっては意外であったようで、正にお客様に作って頂いた「シェフのスペシャリテ」であると思います。(こちらはご予約時にご希望の旨をお伝え頂いております。)

トレフのメニューの基本は日替わりでシェフがコースで作っているのですが、お客様から、「あのシェフのスペシャリテを食べたいのですがいつが一番美味しい季節ですか。」 とのご要望を頂くのことも多いのです。

そこで毎年トレフでは月替わりでシェフのスペシャリテをご案内しております。

ウサギと手長海老のロゼット仕立て、ジュニパベリーソースこの9、10月は、「ウサギと手長海老のロゼット仕立て、ジュニパベリーソース」 と、「ビュルゴー家のシャラン鴨のマルミット、コンソメソース」 です

まずは、「ウサギと手長海老のロゼット仕立て、ジュニパベリーソース」ですが、料理教室をしている私にとってシェフに期待するお料理とは、そう簡単には作れそうにないお皿の隅ずみまでプロの職人技溢れた一皿です。

このお料理の完成を見た時は思わず溜息が出てしまったものです。

こちらの一皿は昨今ではブツ切りの部位を仕入れることが多い時代に於いて、ウサギ1羽を捌き、細かい骨を背中からお腹にかけて外し、これに手長海老を巻きます。火入れの温度の違うウサギ肉と手長海老を完璧に焼き入れなければなりません。

ウサギと手長海老のロゼット仕立てフランス料理業界においてよく「火入れ。」ということを聞きますが、この「火入れが上手い。」は部位によっても大分違います。

私の料理教室では鶏の腿肉はよく使いますが、胸肉やささ身はあまり使いません。それは腿肉の方がコツさえ掴めば比較的簡単に家庭でも周りパリっと中がジュシーに仕上がるからです。

胸肉やささ身はパサパサになり易い部位だからどうしても家庭では腿肉派になってしまいがちです。

ならば胸肉、ささ身の火入れが上手いことこそプロ。というのがシェフの考えです。事実フランス料理で鶏の胸肉のお料理と言えば、「シュプレーム、Supreme、最高の」 という形容詞が付くものがあり、柔らかくかつジュシーに焼けた胸肉ほど美味しいものもありません。

つまり火入れもこだわるなら、この食材のこの部位を使ってこそプロと言えるのかもしれません。

話をもとに戻しますが、シェフのこのウサギの一皿は腿肉ではなく、背中からお腹にかけての部位を使うことにこだわりがあり、またその肉で手長海老という違う温度で火入れをしなければいけない2つの食材を同時に焼く、ことにプロの職人としてのこだわりがあるようです。

また合わせるソースは幾恵もの工程によって作られていますし、私にとってはこれぞプロの技の集大成と思う一皿です。

一方シャラン鴨にはエピソードがあります。今ではもうすっかり有名になってしまったビュルゴー家のシャラン鴨ですが、シェフがこの鴨に出逢ったのはまだそんなに知られていなかった8ー9年ほど前になります。

ある時、鶏肉の輸入業者の若き営業マンが、「是非使って欲しい鴨がある。」 とトレフを訪れ鴨の胸肉のサンプルを置いて帰りました。

その鴨の胸肉を焼いた時の厨房に漂う香りを今でも忘れることはありません。香ったことが無いほどの香ばしい香りで思わず、「何のお肉を焼いているの?」 とフライパンを覗いてしまったことも覚えています。

シャラン鴨「シャラン鴨だって。」 と私が初めてその鴨の名前を聞いたのもその時でした。

驚いたのはその若い営業マンが再度トレフに様子をうかがいに来た時のことです

「君は自分が扱っているこの鴨をきちんと焼いて食べたことがある?」 と言って何とシェフがその鴨を焼いて若い営業マンに食べさせたのです。

「この鴨は素晴らしいよ。きっと有名になると思う。ただこの鴨を有名にさせたいなら、きちんと焼ける料理人のところに持って行った方がいいと思う。ボクだけとは言わないけどボクはこの鴨を焼ける自信があるんだ。ウチの店に入れてくれたら絶対に有名にしてあげる。」と言ったのです。

そんな風に若い営業マンを口説きに掛かったのには理由がありました。当時シャラン鴨はまだ今よりずっと高価で、トレフの客単価ではとうてい仕入れは無理な金額だったのです。

若い営業マンに焼いた鴨のお味がよかったのかそれとも別の理由があったのかはわかりませんが、シェフの熱心な仕入れ金額交渉の結果シャラン鴨はトレフに入荷出来るようになりました。

その後営業マンからは、その時は日本全国ではトレフと京都の料亭を含め4店舗のみが興味を示してくれたということを聞きましたが、そこに偶然にも雑誌の取材があったりしてシェフは約束通りシャラン鴨のお料理を出し続けました。

中でもシャラン鴨の最大のファンになったのはトレフのお客様達でした。シェフは鴨のお味をたっぷりお召し上がり頂けるようにと、採算は度外視しお皿一杯に胸肉を広げてお出ししました。

美味しいモノに敏感な日本のお客様達のお陰でシャラン鴨は瞬く間に広がって行きました。きっと他のお店でも同じように、食に敏感な日本のお客様の舌にシャラン鴨のお味が響いたのに違いありません。

そして、「シェフのシャラン鴨を食べたい。」 というご要望はその後も続き、晴れてシャラン鴨の一皿はシェフ宮本のスペシャリテとなりました。

今や多くのお店で扱うようになったビュルゴー家のシャラン鴨ですが、シェフ宮本のスペシャリテのシャラン鴨の一皿は初めてのあの時と変わらない盛り付け、スタイルです。

こんな風に 「シェフのスペシャリテ」 とは長い月日の中でお客様に育てて頂いた一皿であり、きっとどのシェフ達のスペシャリテにも隠れた様ざまなストーリーがあるに違いありません。

シャラン鴨「シェフのスペシャリテ」とは、どのお料理も御客様に育てて頂いた一皿であり、同時に幾つになっても料理人は御客様に育てて頂くものだと思います。

シェフ宮本のスペシャリテをこの9月、10月も皆さまにお作りさせて頂くことでシェフ自身もさらに精進させて頂ければと思います。

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